「2020年の東京オリンピックに向けて」岡部倫子氏の研究への期待

2020年の東京オリンピック開催に際して、サービスを提供する組織とそこで働く多くの職員とボランティアの人々は、重要な役割を担います。東京オリンピック開催は、東京のみならず、日本のイメージや製品・サービスを世界へプロモートする絶好の機会です。現代はサービス経済が発達しており、対人サービスを提供する職業人も増加しています。そして対人サービス従業員は、感情労働を行うことが知られています。感情労働とは、肉体労働や頭脳労働とは異なり、従業員が顧客へサービスを提供する際に、組織が規定するガイドラインに沿って、自分の感情をコントロールし、適切な対応をする労働形態を指します。例えば、航空会社の客室乗務員には、安全性や保安はもちろんのこと、微笑みを浮かべて親切な対応することが求められ、その他にも介護師、販売員などが感情労働を実践しています。また現代は、職種に関わらず、コミュニケーションが必要な従業員は、感情労働が必要となります。

岡部倫子氏は経営学の研究者で、フランスで航空MBAを、日本で博士を取得した経験を活かし、サービス企業と従業員の感情労働の研究を行っています。氏は、2018年の論文「ヒューマン・サービス組織における感情労働と心理的契約違反の相互効果」の中で、ヒューマン・サービス組織の代表的業界である航空業界をモデルとして、サービス従業員の働き方に関する研究を発表しました。航空業界をモデルにしたのは、加速する航空運賃の値下げ競争、コスト削減、人員削減、早期退職プロジェクトなどが行われており、心理的契約違反が発生し易い業界であると考えらたからです。

心理的契約とは、経営学で使われる用語です。本来企業と従業員の間で結ばれる契約は、契約書に明記されます。他方で心理的契約は、証拠なく信じられている、企業と従業員との間に成立する暗黙の了解を指します。また心理的契約は、会社と従業員がそれぞれの役割を実行していれば、その関係は双方に有益である保証の側面でもあります。日本では、特に契約を書面として結ばなくても大丈夫だろうという考え方をよくます。例えば終身雇用はその代表的な例です。契約には終身雇用の明記はないものの、定年まで勤務することが暗黙の了解となっている部分が企業側と従業員側にあります。

心理的契約違反とは、心理的契約すなわち暗黙の了解が、企業と従業員の間で一致せず、異なった見解を持つ場合を指します。岡部氏は、このような心理的契約違反がある場合、従業員は裏切られた気持ちになり、職務満足は低下し、パフォーマンスも低下すると述べています。また氏は、従業員が「アフェクティブ・デリバリー」を実践する効用を述べています。アフェクティブ・デリバリーとは感情労働の一環で、顧客サービスを提供する際に、従業員が意識的にポジティブな感情表現を用いることにより、顧客満足を向上させる対応を指します。それだけではなくアフェクティブ・デリバリーは、心理的契約違反による職務満足の低下を緩和する効用もあると指摘しています。氏の研究は、東京オリンピック開催に際し、サービスを提供する組織とそこで働く人々にも参考になります。ウェルビーイング(well-being)とは、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味しますが、組織と人々がウェルビーイングな状態で働くことが、今後ますます重要となるでしょう。

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